おすすめ図書 其の五

『博士が愛した数式』小川洋子

 

 80分しか記憶が持たない元数学者と家政婦である母親と彼女の息子との交流を描いた作品です。博士はその息子を頭の形からルートと名付けます。また、博士の素数の話はとても興味深いものです。数学嫌いでも大丈夫。おもしろい話です。

 かなり前のことですが、この小説は寺尾聰 いう俳優が博士役を演じて映画化されました。小説の映画化、映画には本とは異なったエンターテインメントの要素がたくさんあるのでとても楽しめます。私には自分が創り上げたイメージとの相違から落胆した経験が何度かあります。しかしながら,この映画にはそれを感じなかった記憶もあります。私としてはやはり映画化された小説は先に小説を読んだ方がいいと思います。よい小説はその小説家の鋭い感覚と手法で読者の想像力を掻き立てくれるのですから。この映画を見る前に原作の小説を読めば、家政婦、ルート、そして博士の画像はあなたが創り上げるのです。それが小説の魅力でもあるでしょう。

 小川洋子は芥川賞受賞作家ですが、この小説は難解ではなく読みやすいので、今回のおすすめ図書にしました。